2017年12月3日、第5回神奈川地区新人戦がおこなわれました。このコンテストは春の国際スピーチコンテストにはまだ出場資格のない新人に大舞台でのスピーチを経験してもらうために始まったもので、神奈川地区では毎年12月には欠かせない一大イベントとなっています。
さてその日本語部門、各クラブから集まったフレッシュな精鋭たち、人生の悩み、子育てや仕事での困難を乗り越えた話、またユーモアたっぷりで会場をわきにわかせた話など14本のレベルの高いスピーチの中で、ストテリTMCメンバーのチップさんが見事準優勝に輝きました。チップさんはその前の秋のほら話ディビジョンコンテストでも堂々の3位と連続してのご入賞です。
えっ、ストテリTMCの活動拠点は東京では?
はい、実はストテリは上級クラブのためほとんどの会員が複数のトーストマスターズクラブに所属しています。チップさんは神奈川地区の名門日本語クラブの神奈川TMCのご所属なのです。
チップさんのスピーチは14本中ただ1つの爆笑恋愛ストーリー、美しい彼女を一途に思う気持ちは見事相手に伝わったのでしょうか?そしてその恋の果てにチップさんがつかんだものは?
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コンテスト前日まで、私は苦悩の日々を送っていた。
「私のスピーチの衝撃に聴衆は耐えられるのだろうか・・・中途半端な善意は新たな悲劇を生んでしまうのではないだろうか・・・それならいっそのこと辞退したほうが・・・」
頭をかかえ、途方に暮れる私。
そんな時、ふと上着のポケットの中に手をやると、そこには祖母の形見のペンダントが。
「チップ、男ならいつでも全力投球よ!」
祖母の口癖が頭を過ぎる・・・
そうだ、いったい何を悩んでいるんだ。男ならやるしかないだろ!
覚悟は決まった。
そしてコンテスト当日。
私のスピーチ順は14人中11番。まずは他スピーカーのお手並み拝見。
むっ、なかなかレベルが高いな。新人とはいえ、さすがは各クラブの予選を勝ち抜いてきた猛者どもだ。
焦る私は、シャツの胸ポケットに入れたペンダントを握りしめ、落ち着きを取り戻す。
ついに私の番がきた。
のしかかる重圧、高鳴る胸の鼓動、ほとばしる汗。
全てを振り切り、ボルテージ全開でいざ決戦の舞台へ・・・
そこから先は、おぼろげな記憶しか残っていない。
人は極限状態になると未知なる力を発揮するというが、あの時がまさにそれだったのだろうか。
頭で考えるより先に、数々の言葉が口を出る。言葉には魂が宿り、鬼のような迫力で聴衆を虜にする。
気づいた時には、私は表彰台の上に立っていた。徐々に聞こえてくる歓声。
意識が朦朧としたまま表彰台を降りる私の手には、表彰状と・・・あのペンダントが握りしめられていた。
心なしか、ペンダントに描かれた鳥たちも微笑んでいるようだ。
私のスピーチ人生、まだまだ1回の表。今後どんな強打者が現れるのだろうか。
それでも私は逃げずに立ち向かうであろう。全力投球でね。